7.寒さを感じる

寒いと、「生きろ!」という声が細胞から聞こえてきます。

実際、人間にとって、寒さは命取りだからなのでしょう。
私が生まれ育った北海道では、酔っ払って路上で寝てしまった人が翌朝死体で発見されるということもありました。

シラフだと、気温変化に敏感になります。
それは季節のうつろいや環境に対する違和感を感じるということでもあるし、人間の弱さを認めることでもあるし、なんとか体にあるものを燃やして生きようとする細胞のがんばりを感じることでもあります。

寒い冬山を登るときには、あらゆる状況にそなえて体温を保持するものを用意して向かいます。でも、登って30分もすれば身体があたたかくなって汗ばんで、一枚また一枚と着ているものをザックにしまっていくことになります。しまいには半袖にさえなることもあります。そんなとき、自分の身体はたしかに燃料を燃やして動いているのだということを実感できます。

温度を感じるというのは命を感じるということで、ああ生きているなあ、という実感ほど自分を酔わせてくれるものはありません。