64.においをかぐ

昨日、近所のスーパーで芍薬が2本で399円で売っていて、買いました。

小学校の時に、紙でつくったお花のような、フワフワの大きな花びらの中に顔をつっこんで、顔全体で柔らかい花びらを感じながらにおいをかぐと、うっとりする香りがします。

香水やお香も好きなのですが、天然のにおいはそのうつろいや儚さにぐっときます。

3月の終わりに玄関を開けた瞬間に吹いてくる風の春くささや、寝起きの娘の首のうしろのウサギのようなにおい。

もちろん、心地いいにおいばかりではありません。都会を歩いていると、生ゴミのにおいや、排気ガスのにおいを感じるし、自分自身からも、朝は整髪料や化粧のにおいが少しする程度なのに、夕方はそこに疲れや苦味がまじってきます。そこに香水をつけると、複雑な夜のにおいになるなど、1日の中で変化があります。

また、人の身体のそれぞれの場所からも多様なにおいがあります。『愛を読むひと』の、においの描写は素晴らしくて忘れられません。

そんなふうに、繊細なにおいを楽しむことも、シラフならではだと思うのです。