胃カメラの後の、忘れられないパフェ。
胃カメラは大嫌いです。好きな人はいないと思いますが。ですので、外苑前にある北青山Dクリニックという、(マイケルジャクソンが愛用したと言われる)プロポフォールを(適切に!)使って気持ちよく胃カメラを受けられるクリニックに、必要最低限の頻度で通っています。
今年が、胃カメラを受ける年でした。前日の夜から胃を空っぽにしていました。
お酒をやめてからというもの、お菓子をつまんで生きてきました。水しか飲めない12時間、何かの味を求めている自分に気づいて、それができないことがとても苦しく、検査が終わったら何を食べようかとそればかり考えていました。
春の暖かい陽気の中、いつものように麻酔で気を失って、覚めてからも30分寝て、フワフワとした多幸感の中でクリニックを出て、ふと小道に目をやったときに気づいた、ちいさなパフェの看板。なんだろうと思って近づいてみると、小さな工房のようなカフェバー。フードは、パフェのサイズ違いのみです。
開け放たれたドアに吸い寄せられるように入ると、柑橘とミントの香がふわっと香り、清潔で、カウンターの中で、N Y出身という可愛らしいクラフト作家さんのような女性が、魔法のようなパフェを建築しています。黒板には、緻密なパフェの構造図。これを見ると、映えを狙った見た目で一点突破するスイーツではないということがはっきりとわかります。すっかり目を奪われていると、スタッフの方に優しく声をかけられ、カウンターへ案内されました。
この日は、柑橘とミントのパフェでしたが、月替わりで季節のパフェを提供しているとのこと。使っている素材が豊かで、柑橘も数種類、クリームも数種類、ミントも数種類、ゼリーやクッキー、焼き菓子、それを緻密に各層で使い分けて、食感と香りと、味わいが、ひとすくいひとすくい違うのです。シャンパングラスの中の小さな宇宙が、驚きと幸せと作家さんのストーリーを、私の中に届けてくれて、私は、食べるって素晴らしい。食べられてよかった。と、しみじみと喜びを噛みしめ、涙が出そうになりながら、食べたのです。