人とお酒を飲んで酔うとき、私が感じていたのは、
自分の境界線を曖昧にして日常のコミュニケーションとは違うつながりかたをする
ということです。
「あいつポエム書いてるんだってよ」
というセリフには、たいてい嘲笑が含まれています。
あいつは、ヤバいところに行っちゃってる奴だ、というわけです。
でも、ヤバいところへ行っちゃってるという意味においては、
酒を飲んでいる人に勝るものはありません。
その違いは何かというと、私が思うには、
みんなで行っちゃってるのか、一人で行っちゃってるのか、
という違いであるように思います。
先日あった、ミュージシャンでもある職場の先輩の、還暦パーティも兼ねたライブでのこと。
みんなお酒を浴びるように飲み、大騒ぎしている中、
私だけがシラフという状態でその様子を冷静に見ていたのですが、
その先輩が最後に、自作のポエムを朗読しました。
それは観客に大ウケだったのですが、
私はそのとき、たしかに酔いを感じました。
詩というのは、日常のコミュニケーションではないけれど、
人間誰もが持つ感情にアクセスするツールです。
だから、酔えたのではないか、と思いました。
大ヒットの韓流ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の第11話で、
主人公が、法廷で闘った人権派弁護士から、「打ち上げをしよう」と言われ、
その弁護士の事務所の屋上でビビンパとお茶でささやかな打ち上げをするシーンがあります。
その弁護士が「練炭一枚」という詩を朗読します。
その朗読で、そこにいる人たちが敵味方関係なく大空に抱かれているような、
そんな気持ちよさに酔えるシーンです。
先輩のように詩を一からつくるのはなかなか難しいし恥ずかしいかもしれませんが、
気に入った詩を選ぶことならば誰でもできそうです。
いつか、気に入った詩を持ち寄って朗読するお茶会をやってみたいです。