ともぐい

北海道に住んでいる友人が、読み終わったからと言って送ってくれた本。

こういう、知っている人が読んだ本をもらえるのは、とても嬉しいことです。

冒頭の、冬山の鼻の奥も凍るような寒さと、失われたばかりの命からたちのぼる湯気との対比は、臨場感たっぷりでひきこまれます。

文体やセリフは、ストイックで骨太。主人公が女の人を、あたたかくて舐めると塩気のするもの、って表現するのも、そういう目で見ていることになんの嫌悪感も覚えないほど気持ちの良い獣っぷり。

獣の道は、シンプルで力強く、善も悪もなくて、命の味は濃い。

人の道は、複雑で矛盾に満ちていて、善と悪が混在していて、命は失われそうになって初めて気づくもの。

どちらがいいか選ぶのは難しい。だから、選択肢なんてないほうが楽なのかも。二つの橋のうち、誰かにどちらかの橋を切り落として欲しいと、どこかで願っているのかも。

生きたいところで生きて死にたいところで死ぬ、という、究極の自由。それは、現代にからめとられている人のほとんどが叶わないし、それを選択する勇気なんてないことがわかるから、憧れてしまう。

それを見せてくれる物語に感謝します。